飛蝗の農場

飛蝗の農場 (創元推理文庫)

飛蝗の農場 (創元推理文庫)


サイコスリラー。
なぞの「狩猟者」追われて逃げまどう男の話。


筋書きを俯瞰してみれば、
  狩猟者の正体は何?男を追う理由は?
という箇所に恐怖と不安を覚えそうな設定。


しかしながら、迷い込んできたその男を不審者と思って銃をぶっ放し、
手当をして一緒に住ませてしまうという
エキセントリックな中年ヒロインが何よりもサイコで不安になってくる。

それとも現実で聞く発砲事件や、ルームシェアなどの同居談などを考えてみるに、欧米人ってこういうものだろうなのか。


タイトルを見たときには、巨大バッタ、あるいは無数のバッタにおそわれた農場の悲惨な話かと思っていたのに、
ただ単にヒロインがバッタの育成農場を経営しているというものでした。
なぜバッタ。


ミザリーを彷彿とさせる電波行動ヒロインなのに、
恐怖の対象としては書かれていない。
ちょっと足りないけど、魅力的な女性としてヒロイン扱いされている。
そこのズレが奇妙。


一人の男のある一日をスケッチしていくシーンなどは面白いのだけれど、物語全体は楽しめない。
ホラーやサスペンスなど、不安と恐怖をあおる物語は、
(作者がねらったどんでん返しなどはあるかもしれないが)
被害者と加害者、異常者と健常者の視点が割と明確に分けてかかれるものかと思っていたので、天然サイコヒロインの存在が引っかかって、奇妙な作風という以上に感じにくかった。


そしてオチが納得いかない。
「やってはいけないオチと」して数えられるものの中に入ってるのではと思う。
しかし、あまりに堂々と使ってきたので、もうこれでもいいかな、という気分になった。
オチにたどり着くまでの過程がそんなに盛り上がらなかったので、がっくり感はないし。


トホホに感じたことばかり書いてしまったけれど、描写や構成はかなり面白い。
なので、設定と本筋の違うはずの、この作者の別の話も読んでみようと思う。