軽く感想
年末に読んだ本の感想&覚え書き
2003年このミス編
・葉桜の季節に君を思うこと
合コン、ナンパ、援助交際と、この世の性を謳歌することに厭わない何でも屋の主人公。
彼の高校の後輩の思い人の相談に乗ったことから話は始まる。
軽快な文章に交えて細かく仕掛けられた作者の大きな罠。
読み終わった後に続けてもう一度読み直してしまった。
このミステリがすごいの一位にはなるよなぁと納得できるような作品。
・月の扉
不当投獄されたカリスマ的存在を救おうとした三人のグループに沖縄本土行きの飛行機がジャックされた。
緊迫した機内から謎の死を遂げた女性が発見される。
行動の自由の利かないジャック犯から、目端の効く乗客の男が探偵役に任命された。
品よく綺麗に纏められたミステリ・サスペンス小説。
ぐっとこみ上げるものはないけれど、読み疲れもなくするすると読み楽しめた。
・陽気なギャングが地球を回す
思慮深く人の嘘がわかる男。調子の良い大風呂敷演説者。脳天気なスリの天才。きりきりした人間時間計測器。
四人の超人(変人?)が企てたのは銀行強盗。
しかしとんだアクシデントから事は上手く運ばず……
キャラの人を食ったやりとりと凝った構成にノって読み切れるお話。
・マルドゥック・スクランブル
少女娼婦が殺されかけた。
彼女の生存意志を受け、彼女を電子干渉能力者として蘇らせたのはマッドサイエンティストとネズミ型万能兵器。
事件担当官である彼らは殺人犯から彼女を保護すると共に、事件解決の協力を彼女に願い出る。
2003年日本SF大賞受賞作であり、SFに止まらない魅力を各所で後押しされているお話。
全三巻。二巻から三巻にかけてのカジノシーンで繰り広げられるギャンブルゲーム理論と心理描写が圧巻。
ヒロイックSFアクションとして楽しめる上、カジノシーンはこのミスにあげられてもおかしくないミステリ具合。
・グロテスク
怪物じみた美貌を持つ妹・醜悪な努力に取り付かれた愚かな女・森の栗鼠じみた軽やかさを見せる才女。
主人公と同じ女子校時代を過ごした彼女らの中から、連続売春婦殺人事件の被害者が発生した。
タイトルから想像した物質的なグロさではなく、ひたすらに精神的なグロテスクを感じた。
読み進めていくうちに頭の中で構成していく物語の筋がずれていく。
今まで読んだこのミス該当作の中で、2003年の大作を選べといえば言ったらこれだと思う。
・街の灯
華族・士族といった階級が生き続ける時代。
士族にて社長の娘の主人公は凛々しい女運転手の”ベッキーさん”に気を許し、日常の謎や事件を語り聞かせながら解決してゆく。
この本は中編が三編入ったもの。
作者は北村薫。
作者一流の語り口で大正・明治初期の雰囲気が存分に満喫できた。
シリーズになりそうなので次作も期待。