パークライフ

パーク・ライフ (文春文庫)

パーク・ライフ (文春文庫)

文章は読みやすい。
洒落た都会人っぽい話で、自分とはかけ離れすぎているためにリゾート地を見るような、リフレッシュ感が持てて雰囲気が良い。



芥川賞ということなので、出来の悪い学生に戻った気分でうんうん唸りながら、もうちょっと読み解いてみる。
以下、内容を記したネタバレにつき白反転。




主人公は、二人そろって家を出てしまった友人夫妻のマンションに飼い猿の世話を任されているという名目で住んでいる。
行きつけの公園がある。
本来、公園は共同の場であるのに、その公園には縄張り意識を持つ。
公園に向かう際に、視界を制限して軽いトランス感を味わう。
つまりは、異界・自分の居るべきではない場所の感覚を味わおうとしている。
たぶん。
自分の場所は「異界にあって、一時だけの場でよい」ということだろうか。


スタバ女と出会う。
スターバックスはニューヨークの一人旅の思い出に繋がっている。
外国であり過去であり、これまた異界。


クローズアップされる臓器。
自分の中にある物を外側から意識させられている。ような気がする。
主人公は筋肉を鍛えたり、体力測定をしている。
公園を人体にたとえて思ったりもする。身体意識が強いのか。
>自分の場所は「異界にあって、一時だけの場でよい」ということだろうか。
内面意識が強いから、自分の場所を常に求めないのだろうか。


友人夫妻から猿の世話を任されている。何で猿。
オシャレ?ある意味異界。
人に近く人でない物。印象のブレを呼ぶ仕組みか。ユーモアか。


過去の恋は今にまで続いている。
過去や他人の出来事ばかりが具体的で、現在はあまり物事を成さない。


公園を俯瞰することを目指す老人。
地の視線からしか見たことのない場を、別の場所から把握したいという意識か。
第三視点を自分の物にしたいという願望か。


スタバ女は過去を固定した写真を見て、未来の何かを決める。
”今”は迷いの時期だったのだろう。
現在がないがしろになっている。



現在を作ろうという意図が見えなくて、それで苦しんでいるわけでもない。
だからふわふわして暗くはないが不安定な感じがする話。
ってところなんだろうか。



もの凄く適当なメモの羅列になってしまった。




同書に納められていた「flowers」
主題の「花」に色々な物をたくして書いてあるけど、ノータリンなので意図が良くわからなかった。
物語としては「パークライフ」よりもわかりやすいと思った。

「帯に書いてあったコピー」
日比谷公園のベンチで何気なく見ていた恋が……

村上龍芥川賞選評
「何かが常に始まろうとしているが、まだ何も始まっていない」という、現代に特有の居心地の悪さと、不気味なユーモアと、ほんのわずかなあるのかどうかさえはっきりしない希望のような物を獲得することに成功している