空中ブランコ
- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/04/24
- メディア: 単行本
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伊良部が無邪気な変態医師から、手間のかかる愛玩動物になっているような。
愛らしさ20%アップが直木賞受賞のポイントだったりするだろうか。
○空中ブランコ
不眠症の会社員。会社といってもサーカスのこと。
役職は空中ブランコのファーストフライヤーで、サーカス団のベテランだ。
キャッチャーが新人に変わって以来、ミスが続いて満足な芸が出来なくなっていた。
団長や妻に神経科に行くことを薦められ、睡眠薬をもらうだけならと病院に行ってみたら、担当医はサーカスを見たがったり空中ブランコをしたがったりで、ろくな診察を行わない。
○ハリネズミ
先端恐怖症にかかった極道の若頭。
箸も持てないフォークもダメ。ヤッパなんてとんでも無い。
なのに悩みを打ち明けた医者は治療と言って、尖った針の注射ばかり打ってくる。
○義父のヅラ
改まった場をぶちこわしにしたいという強迫神経症にかかった精神科医。
なんとか隠して過ごしていたが、同窓会で再開した同級生の精神科医にバレてしまう。
同級生の治療を受けることになり、やりたいことはやっちまいなと唆されて、患者は少しずつ確実に壊れていく。
○ホットコーナー
イップス(体が意に反した動きをする)にかかった一流野球選手。
マスコミが怖くてかかりつけの医者には打ち明けられず、偶然見かけた総合病院に相談することになる。
そこの担当医にねだられ、なぜか野球遊びをすることになる。
野球に対して全く無知な担当医がどうして野球ってこんな動作が出来るのだろう」と感嘆をするたびに患者の悩みが深まって、病状が悪化する。
○女流作家
心因性の嘔吐症にかかった売れっ子作家。
さらに、「この話は以前に書いたことがあるような気がする」という強迫症にかかる。
担当医の精神科医に相談に行っても「原稿に穴が空いたら僕が書いてあげる」と脳天気なことを言うだけだ。
”勝ち組作家”である作者の自省の叫びが入っている話のような気がした。