クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)


各巻あらすじ


クビキリサイクル
 財閥令嬢が孤島の屋敷に天才達を招待した。
 ”戯言使い”の「僕」は、工学の天才”青色サヴァン”玖渚友(くさなぎ とも)の付き添いとして同行する。

 科学・絵画・料理・占術・工学の天才女性五人と、
 その仲間達と、
 館主・メイドが集う島で、密室クビキリ事件が発生する。



クビシメロマンチスト

 ”クビキリサイクル”から抜け出した戯言使いの「僕」は大学生活を始めていた。
 クラスメイトの誕生会に招待されて、参加するが、その翌日にはパーティの主役が絞殺される。
 一方、街では連続切り裂き事件が発生していた。



クビキリサイクルの 第一章の見開きページに出てきた文章。

 世界は優秀に厳しい。世界は有能に厳しい。
 世界は綺麗に厳しい。世界は機敏に厳しい。
 世界は劣悪に優しい。世界は無能に優しい。
 世界は汚濁に優しい。世界は愚鈍に優しい。


 こんな感じで詩的というかキャッチフレーズというか、リズムに合わせて目に引く言葉を並べていく、言葉遊びがふんだんに盛り込まれている。


 個人的には、こういう文を読むのは好きではない。
 私は読解力が低いので、文体リズムと目新しい単語でイメージを加速されると、文章の意味を理解しないまますっ飛ばされて、印象だけを植え付けられてしまうのだ。
 そもそも、その効果を狙ってるようでもあった。
 落ち着いて読んでも意味がわからない。でも雰囲気はわかる。
 と、いうような文が結構あった。
 イカガワシイ呪文で洗脳されてるような気分になるので、ちょっと嫌な気分になる。


 しかし、ゲームなどで見かける分には嫌な手法ではなかったりする。
 あれは音・絵・振動と、あらゆる手段でユーザを洗脳する物のような気がするし。考えるな感じろのメディアかなと。
 そんな曖昧で我が侭な思いこみで好き嫌いが決まるのは、不公平で不思議だなと我が事ながら。


 それはともかく。


 ”天才”や”最強”や”最凶”がそこらにうろつくスーパーな世界に属している主人公達の論説は、複数の常識と現実を知っている(── 世の一般常識と、自分たちのスーパーな常識など ──)故か、観念・精神論的。
かつ、本来複雑な要素を持つ物事を、単純に記号化して組み立て、強行突破をするような詭弁が目立つ。


 主人公たちもそれを自覚していて、ニヒルに嘲笑したり「戯言だけどね」と決め言葉で締めてくる。



 一巻を読んでいたときのこと。
 主人公の過去エピソードが伏線的に語られ、先が気になって読んでいったのに、結局その巻の中では満足いくような話は明かされなかったので、ぽかーんとした。

 
 一巻一巻で、一挿話をフォローしないタイプの物語らしい。
 設定だけ小出しにされているようで、イライラさせられつつ気になってしまう。


 観念論は無為な奇説に陥りがちだ。
 登場人物が繰り広げる無為の悲しさ、奇説・奇行のいびつさを感じる話なのかもしれない。

 登場人物そのものに、様々な”天才”や”英雄”達に、惹かれながら読む物かも知れない。


 設定に興をそそられているので、先を読んでみたいとも思う。