ニッポン硬貨の謎

ニッポン硬貨の謎

ニッポン硬貨の謎

エラリー・クイーンの未訳原稿が発見され、それを翻訳した。
そんな体裁をとった本。
細部にわたるまで「当時の英国人・クイーンが書いた日本舞台の小説」の形式に拘って書かれている。


エラリー・クイーン作の国名シリーズ自体、
「作家探偵エラリー・クイーンが活躍する」という体裁で書かれている物なので、この時点で二重の額縁に納められていることになる。


さらに、エラリー・クイーン当人も作家人生にトリックを施したことで有名であるし、この本のメインストーリーは若竹七海の実体験から展開された企画小説「五十円玉二十枚の謎」を引いてきている。


幾重に歴史とトリックを重ねていたり、
エラリー・クイーンマニアのヒロインが作品論を打ったり。
なのに、論説ぶった重苦しさもなく、見通しの悪い所もない。


「五十円玉二十枚の謎」の解答としてはあまりピンと来なかったけれど、
2005年の今ではなく「エラリー・クイーンが原稿を書いた時期」の、昭和日本の薄闇の時代性を表現した解答ではないだろうか。
多分エラリー・クイーンファンならば頷きながら読める物ではないのだろうか。
古典ミステリファンならば胸打つ物ではないのだろうか。


そんな風に贔屓の引き倒しができるぐらい、作家に圧倒された。